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平成20年9月5日
市立池田病院 眼科
視能訓練士 嶋田 律子
はじめに
Kinki−ビジョンサポート(以下、KVS)の活動の一環である「病院内サロン」のご紹介を致します。
市立池田病院眼科では、2002年2月からロービジョンケアを行っています。当初、視機能障害によるQOLの低下をルーペ、拡大読書器などの補助具類で補い、必要な場合はライトハウスなどの訓練施設を紹介するのがロービジョンケアだという認識でケアを行っておりました。
しかし、その中で当事者から様々な悩みを聞くことにより、精神面の支援をすることの重要性を痛感するようになりました。
そこで、KVSの協力を求め、サロンという形で精神的支援をすることを目的に2005年3月からスタートさせました。* Kinki−ビジョンサポート(KVS)とは、医療と福祉の狭間で苦しんでいる人の架け橋となり、視覚障害者が、早期に社会参加及び、社会復帰できるよう支援しているNPO団体である。
病院内サロンの設立経緯
2005年3月 病院内サロンスタート
まず当科におけるケアの内容と院内サロンのご紹介をします。
データーは2007年9月に開催されましたロービジョン学会のためにまとめたものです。始めに問診表により日常生活の不自由度を詳しく聞き、視機能の評価をした上で必要なケアを選択しています。
〔ケアの内容 〕この中から特にQOLの向上や、精神面のフォローの必要性があると判断した患者にサロンの案内をしました。
@ 問診による聞き取り
A 視機能の評価(遠・近視力)視野測定
B ハイパワープラスレンズ
C 弱視レンズ、ルーペ、拡大読書器
D 身体障害該当者にその特典を説明
E 生活の工夫の方法
F 図書館で受けられる情報提供
G 患者の会を紹介
H 「Kinki-ビジョンサポート」の紹介
I 生活訓練施設の紹介
J 院内サロンの案内
当院は地域医療の中核をなす公立病院である為、市の福祉課での案内や、市の広報誌やケーブルテレビなどのメデアも使い、当院通院外の人にも広く参加を呼びかけました。
サロン参加者の当事者は、網膜色素変性症が、44%でもっとも多く、次に緑内障16%、糖尿病網膜症13%と続きます。
2005年3月から2007年7月までの参加者延べ人数合計 372名です。
当事者とその家族の割合の合計は、61%です。ボランティア13%、視能訓練士9%、歩行訓練し4%、眼科医3%、その他の内訳は、ケア・マネージャー、臨床心理士、作業療法士、補助具取り扱い業者、他院の視能訓練士などです。
毎回サロンの支援をしてくれている、KVSの院内サロン担当スタッフは、ロービジョン当事者2名光学機器関係者1名、ケア・マネージャー1名で、また、サロンのその日のテーマにより、内容に精通しているKVSスタッフが応援にくるという体制が整えられています。
サロンの内容
回 講演・講座内容 講師 第1回 サロンの目的 ORT・KVSスタッフ 第2回 患者の会紹介 KVSスタッフ 第3回 補助具の紹介 KVS(日本ライトハウス) 第4回 生活訓練・日常生活のテクニック KVS(日本ライトハウス) 第5回 歩行と手引きの方法 KVS(日本ライトハウス) 第6回 ルーペ・拡大読書器の使い方 KVS(タイムズコーポレーション) 第7回 携帯電話の便利な使い方 KVSスタッフ 第8回 「見えにくい人が明るく生きていく為に」 KVSスタッフ 第9回 「自立支援法について」 市役所障害福祉課 第10回 「白杖の選び方」「白杖講座」 ジオム社・KVS 第11回 歩行の基礎 KVS(日本ライトハウス) 第12回 補助具の紹介 KVS(日本ライトハウス) 第13回 生活訓練・日常生活のテクニック KVS(日本ライトハウス) 第14回 お楽しみ会(落語・音楽演奏・ゲーム) KVS(ケア・マネージャー) 第15回 自立支援法と公的サービス 市役所障害福祉課 第16回 「私はこのようにして視覚障害を受け入れてきた」(私の生活、創意、工夫) 日本点字技能師協会副理事長 三上 洋氏 第17回 白杖の基本的な使い方 KVS(日本ライトハウス) 第18回 補助具の紹介 KVS(日本ライトハウス) 第19回 日常生活のテクニック KVS(日本ライトハウス) 第20回 視覚障害者のリクレーション KVS(ケア・マネージャー)
サロンは、基本的に奇数月の休診日である第4土曜日の10時から12時の2時間開いています。第4回から前半1時間を情報提供の講演をし、後半1時間を当事者4〜5名にスタッフ及びボランテア1〜2名加わったグループでの座談会の時間としてきました。
2008年度は、土曜日では参加できない方の為に、日曜日開催の日を二回設けました。多くの方に参加した満足感を得ていただく為に、参加者の要望を聞きながら内容及び方法をかえていっています。
学会発表の機会に、サロン参加者にアンケート調査を行いました。
参加して良かったですかの質問に対して、70%がハイ、8%がイイエ、22%がわからないでした。
このように参加者の満足度は高く、イイエとどちらとも言えないの回答も、サロンをスタートさせた直後に参加した当事者で、サロンとしての役割が十分はたせていなかったことにあります。その後、参加者や、KVSの当事者の意見等を参考に、内容を改善するに従い満足度も高くなっています。今後の参加希望の方は74%であり、イイエ・わからないの回答も高齢の為、あるいは仕事の都合や、介助者の都合などで参加したくでもできないという理由でした。
現在サロンは、ある程度軌道に乗ってきており参加者の満足度も高くなってきました。しかし、現在に至るまで、様々な問題があり、問題解決に時間と努力を要しました。これは、主な問題点を要約したものです。
院内サロンの取り組みに当たっての問題点
・ロービジョンケアに対する診療報酬がない
・視能訓練士の人員不足
・他職種、他機関からの情報不足
・人手を要する
・プライバシーの問題・設備、運営上の諸問題(病院内の為活動の制限等)
・様々な参加者に対する対応
特に、診療報酬が無い、視能訓練士の人員不足は、視覚障害者の立場に立ったロービジョンケアをする大きな障害になっていると言えます。
近年、他職種との連携によるロービジョンケアの大切さは周知され、各地でその取り組みが行われてきています。しかし、受容過程の否認期・混乱期に、福祉課への相談や、リハビリテーション施設での訓練を提案しても、なかなか、その一歩を踏み出す気力も勇気も無いことが多く単に紹介しただけでは、リハビリテーション施設の敷居は非常に高く、自立できるだけの訓練を受ける方はほんの一部にしか過ぎないように思います。視覚障害者の受診病院でのロービジョンケアが不十分であれば、連携は難しいと考えます。
有効なロ−ビジョンケアをする為に
有効なロ−ビジョンケアをする為には、無駄に苦しむ時間を与えない為の受障早期のケアが大切です。
社会からの孤立感解消の一助として行う地域社会での支援や、ロービジョン当事者間のピアカウンセリング及び、情報交換、ボランティア団体の協力、他職種・他機関との連携などが大切であるといえます。
また、それに加えて、今回のアンケート調査結果からも言えますが、通い慣れ、信頼をおいている通院病院でのこれらのケアがより有効であるといえます。
以上のことより、有効なロービジョンケアには、「病院内サロン」の果たす役割はきわめて大きいと考えます。
サロン参加者の表情が、回数を重ねるごとに明るくなり希望を見出し、生活に張りを感じていく様子を私達は目の当たりにしています。QOVの低下による不安や、失意を感じている人が希望を持って自立するには同じ立場の当事者の励ましが不可欠です。
通院病院で提供された情報や、その場で出会った当事者同士の励ましにより白杖を持つ勇気を与えられ、訓練施設に足を向ける勇気を与えられることもあります。社会に踏み出す一歩を優しく後押ししてくれる場が必要なのです。
あるサロン参加者の言葉ですが、「子供の頃には遮光眼鏡の処方や、大人になってからはルーペや拡大読書器を紹介されているので、割と早くからロービジョンケアを受けてきた方と思います。読めなかった文字が読めるようになったという喜びはありましたが、それは一時的なもので本当にケアを受けたと感じたのは池田病院で紹介されたKVSサロンで、同じ疾患の方と知り合いになった時でした。」というお話を聞きました。
また、ある中途失明した方が言われた言葉ですが、「医師から失明の告知を受けた時は、地獄におとされます。でも事実である以上仕方のないことです。でも、その地獄で仏に会うことができれば救われるのです。それがロービジョンケアだと思います。」と言われました。
このお二人の言葉は、ロービジョンケアが単なる補助具の紹介で終わっては、真の意味でのケアにはなっていないことを示唆していると思います。
「病院内サロン」を開催させていただき、補助具や訓練施設の紹介と共に病院での精神的支援の大切さを更に痛感させられることになりました。
平成17年3月に第一回院内サロンを,KVSのバックアップにより開くこととなりました。
その後、平成19年7月までの間に、当事者の講演、生活のテクニック、補助具の展示、白杖講座、市の福祉課による自立支援法の話など、テーマを変え10回目を迎えています。休診日である土曜日の午前中2時間を使い、前半はテーマに沿った内容を、後半は4〜5人の小グループに別れ自由な座談会の場としています。
第一回サロンの出席者は当事者及びその家族、スタッフ合わせて15名でしたが、内容が充実してくるにつれ参加人数も増え、講習内容にもよりますが見学者、ボランテイアも含めると総勢50〜60名の大きなサロンとなっており、それなりの成果を出すことができています。
しかし 当院サロンのこの成果は、KVSの協力によるものであると言っても過言ではありません。眼科スタッフのみでのロービジョンケアには限界があります。
KVSスタッフには、経験豊富で多彩な人材が集まっています。そのスタッフに支えられ、私たち医療従事者も視覚障害の当事者や家族も、多くの知識や励ましを得てサロンが開かれている2時間を暖かい思いで共有できています。
特に、同じ苦しみを味わい乗り越えてこられた当事者スタッフが果たすピアカウンセリングの役割は、非常に大きいと感じています。
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